まとめ

2019年『劇場で見たインド映画』の感想まとめ

2019年、バーフバリ旋風の吹き荒れた2018年を背中に受けて多くの日本語字幕つきインド映画が公開されました。

この記事ではそんな中から「個人的に劇場で鑑賞したインド映画」の感想についてまとめまています。

日本初公開が2018年の「ガンジスに還る」なども含まれていたり、大作の「パドマーワト」や「ロボット2.0」を見逃していたりしていますがご容赦を。

本記事にはネタバレが含まれます。ご注意ください。

バジュランギおじさんと、小さな迷子

2019年はインド映画三昧の一年!!その開幕を告げたのはジャンルとしてのインド映画を大きく飛び越えて2019年屈指の大傑作だった「バジュランギおじさんと、小さな迷子」でした。

この作品についてはレビュー記事がありますので詳しくはこちら↓

なぜ理想郷で止めたのか「バジュランギおじさんと、小さな迷子」の解釈と考察【ネタバレあり】 あらすじ インド人青年と、声を出せないパキスタンから来た少女が、国や宗教を超えて織り成す2人旅をあたたかく描き、世界各国でヒットを...

映画の始まりから終わりまで醸される、催涙効果とでも言うべき思わず涙が出てしまうシーンの連続。

でありながらインド映画あるあるギャグ感や「待ってました!」と言いたくなるような本場の突き抜けた群舞シーンなど、カラッとした娯楽の王道を外れない作品でした。

テーマとして含まれているカシミール地方の現状や、インドとパキスタンの厳しい情勢について注目する切っ掛けにもなる社会的な側面も見逃せません。

これはたまたまですが、2019年はじめに日本で本作が公開されたその直後から現実のカシミール地方を巡る対立は急激に悪化。このまとめを書いている年末にかけて良いニュースは殆どありませんでしたね・・・。

個人的には本作を切っ掛けにインドとパキスタンの問題について、少なくとも映画を見る前はサラッと流していたこのニュースについて、注目するような意識の変化があった1年でした。

ガンジスに還る

27歳の新進気鋭の監督が手掛けた、ボリウッドの文脈とは全く離れた傑作「ガンジスに還る」。

公開から年をまたいで2019年はじめにようやく見られたのですが、万人に勧めたい傑作の一本でした。

この作品についてはレビュー記事がありますので詳しくはこちら↓

画で語る死生観「ガンジスに還る」の感想レビュー【ネタバレ】 あらすじ  インドの新鋭シュバシシュ・ブティアニ監督が弱冠27歳で手がけ、ベネチア国際映画祭などで賞賛されたヒューマンドラマ。雄大...

レビュー記事とも重複になりますが、やはり画作りで親子の関係性や世代間のギャップを表現してしまう見事さにつきます。

加えて肝心のその画というのが、インドの市井の人々を飾らずありのままに映したかのうような、ドキュメンタリーかと思えるほどにナチュラルなのが個人的などストライクでした。

この点では映画のテーマこそ違いますが、「めぐり逢わせのお弁当」が好きだった人にはたまらない作品かと思いますね。寝食のシーンが多いところなんかも、インドの生活感が溢れていて最高です。

時間や仕事に追われて忙しい時、心を整えるために側に置いておきたい一本となりました。

SANJU/サンジュ

 インド映画デビューが「PK」だったので、ラージクマール・ヒラーニ監督の「SANJU/サンジュ」公開は待ちに待った作品だったのですが、上げた期待値に対して結果はもう一つというのが正直なところ。

主演ランビール・カプール演じる実在の現役俳優サンジャイ・ダットの破天荒ぶり、もといダメダメ人間っぷりは素晴らしく、それこそ恥も外聞もなく「如何にダメな奴か」を徹底的に描いた部分は最高でした。

その点の正直さがどストレートで心に響きましたし、エルトン・ジョンを描いた「ロケットマン」で主人公の徹底した堕落描写からの再生物語が好きな人には堪らないかと思います。

ただし、個人的にはその他のところで言いたいこともチラホラとあったり。

例えばインターミッションでサンジュの友人が重大な謎を提示して、後半戦はず~~~~っとそのネタを推進力として引っ張るわけですが、「どうせ友人の勘違いなんだろうな」と思っていたら案の定勘違いなだけでなんのひねりもないオチでがっかり。

あるいは映画内で新聞を代表とするメディアの報道姿勢について問いただすようなテーマも、本作自体が映画という一方向にいくらでも偏向して伝えられるメディアということを考えるといまいち乗れなかったです。

「サンジュを好き放題に書くゴシップ vs サンジュの真実を描くこの映画」の構図が提示されても、どっちもどっちという以上の感想はなかったですね。サンジュを守るお父さんも映画が言いたいことを、文字通りセリフとして代弁しすぎていて、製作者が全面に出すぎている部分も気になりました。

そういう説教臭い部分とか、中だるみしがちだった演出をぶっ飛ばすかのようにエンディングで本人が出てきたところが本作の白眉でございました。ラストはスカッとしましたよ。

余談ですが本作で不憫なヒロインとして出演していたソナム・カプールさん。これだけ日本公開のインド映画が増えてもメインのヒロイン役や主役級の活躍をする作品が全然ないのが寂しいです。

各配給さん、なんとかなりませんかね?

クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅

映画『クローゼットに閉じこめられた僕の奇想天外な旅』公式サイト

本作は監督ケン・スコット、製作は5カ国の合作ということで純インド映画ではまったくないのですが、舞台設定や主役のアジャを演じる俳優ダヌーシュを鑑みてインド映画扱いということに個人的には解釈した「クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅」。

出落ち映画だと思って見たら、国際情勢を皮肉りつつファンタジー風味満載でほんわかコメディに落とし込み、実は世界各国の子供に見せたい知識と好奇心の素晴らしさを説いた佳作でした。

この作品についてはレビュー記事がありますので詳しくはこちら↓

【70点】インドの小さな部屋から世界に夢を持つ「クローゼットに閉じこめられた僕の奇想天外な旅」 あらすじ 世界30カ国で販売された人気小説「IKEAのタンスに閉じこめられたサドゥーの奇想天外な旅」を映画化し、クローゼットに...

ヨーロッパ各国を渡りながら二転三転と展開に右往左往されるわけですが、その話運びがとっても軽快で楽しいです。

余談ですがヒロインを演じたエリン・モリアーティ、本作の後に話題のドラマ「THE BOYS」に出演。世界的なブレイク前夜の映画出演作として今後話題になるかもしれませんし、彼女の綺麗なサリー姿が見られるのは本作だけ!かもしれません。

イスラム系の父による抑圧と家庭内暴力に負けず、娘のインシアが歌手になる夢を追いかけるというストーリー。この物凄くシンプルなサクセスストーリーが、まあ泣ける泣ける・・・。

それを支える理由の一つが、なんと言っても父親ファルーク役のラージ・アルジュン演技力とその演出。物理的な殴るなどの怖さだけではなく、精神的に支配する怖さというものを見事に表現されていました。

この2019年暮れまでに見たあらゆる映画の中でダントツに「怖い悪役」でしたね、間違いなく。個人的に助演男優賞を渡したいです。

まず押し黙って静かにしているときに何を考えているかわからない。そしてアクションを見せたと思った次の瞬間には暴力へ移行しているという、この読めなさが素晴らしいです。

これを何度も何度も繰り返されると「次は何をされるんだろう・・・・」という恐怖を想起せずに入られなくなります。この逃げ場のない中で圧力を受け続けるという表現こそ、まさに家庭内暴力を受けているような錯覚を引き起こす要因。直接的にこの攻撃を受ける妻のナズマと娘のインシアに感情移入をせずにはいられなくなります。

常にこの緊張感をもたらす父親の存在が、強い意志で突き進むインシアをより際立てていたように思います。

そんな最悪な状況からの逆転劇が、現代的で実に素晴らしい!

インシアをひたすら守り、暴力に耐えながら育て上げたナズマがついに反撃=離婚を突きつけるくだり。決定的にどうしようもなく悪い人間が相手であっても、その反撃は決して暴力ではない。

強い「意志」の力と冷静な「法」の力こそが、理不尽な「暴力」に対抗できるのだというメッセージが提示されます。ここは最高にアガる場面でした、カタルシス!

同じアーミル・カーン出演作で彼が厳格な父親を演じた「ダンガル きっと、つよくなる」では、強権的な父親像がただ単に肯定されるエンディングが物凄く嫌いだった(しかも悪役とされたコーチ役のステレオタイプな感じも好きじゃなかった)ので、「シークレット・スーパースター」の一歩進んでいる回答は素晴らしかったですね。

最後になりましたが脇役に徹したアーミルさんも良かったですね。スタッフロールのサービスも湿っぽくならずに楽しく帰れる配慮にもなっていて、楽しめました。

敵軍に完全包囲された砦の防衛を、たった21人で戦い抜いたシク教徒の兵士たちを描いた実話ベースの戦争&アクション映画。

私の率直な感想は、良いところと悪いところの落差が激しすぎるということに尽きます。

まず先に良いところを挙げると、アクシャイ・クマール演じる主人公イシャル・シンの回想&幻想としてパリニーティ・チョープラー演じる妻が登場するシーンは全部良かったです。表面的にはザ・鬼軍曹としてのイシャルが、実は人間味の溢れた普通の旦那さんでもあるんですよ~という深みが出ているんですよね。

その他、ぼんくらな部下隊員たちと過ごす日常を含めた「男子部活感」あふれる描写は笑えたし、歴代見てきたインド映画でも屈指のむさ苦しいダンスシーンもすごく良かったです。これらの良いシーンは、コメディや硬派なドラマまで引き出しの多いアクシャイさんを活かしてもいます。

そんな尊い日常がラストの略奪描写であっさり敵に足蹴にされるところも、これらドラマパートあっての喪失感や感動につながっています。このラストシーンは本作の名シーンでした。

しかしそれらをかき消すぐらいに良くないのが、まさに本作のテーマである「アクション見せ場」+「防衛戦」です。ここは看過できない物がありました。

まず「アクション見せ場」。主人公イシャルを中心に剣劇や銃撃戦を見せてくれるわけですが、ここのスローモーションの使い方が酷すぎます。本当に下手で格好悪い。

「300」「ワンダーウーマン」「バーフバリ」など、この手のスローを使った部分アクションは、一枚絵として見たときにバキバキに構図の出来上がった格好いい絵を狙ってこそです。なんなら宗教絵画的とも言うべき、背景や小道具に画面全体の配色から意図する物語上の意味まで考え抜いた上で使うべき演出法です。

本作が最悪なのは「斬るだけ」などの単調な動作をただ引き伸ばしていると言うだけで、スロー中の絵がダサいし意味もありません。しかも何度も何度も何度も・・・飽きるぐらいにやる。

隊員が死ぬたびに年少の兵士が名前を刻むという天丼シーンも、テンポに大した変化もつけずにやるので冗長すぎです。これって刻一刻を争う「防衛戦」の最中なんですよね・・・?

「防衛戦」という観点でいうと、知略を生かした戦い、時間経過とともに見せる演出もわかりづらすぎだと私は感じました。

例を挙げると、まず敵の壁を破壊しようとする工作兵の見せ方。彼らが壁でなにかしようと工作をし始めたあと、割とすぐにイシャルたちが捕まえた敵兵に爆弾を仕込んで、交渉で敵陣に返した段階で爆発させるという計略を謀ります。

「なるほど。敵の策を看破して爆弾ごと突き返したのか!」と思ったらそうではなく、工作兵は終盤までしっかりと居て工作を完了してしまいます。なんでこんな分かりづらい編集をするのか。というか、籠城序盤に敵を捕縛する余裕なんてありましたっけ?どこから連れてきたの・・・?

あと見た目のインパクトとキャラは良かった中ボスのセクシースナイパーさん(SNSなどでそう呼ばれている!)。

せっかく圧倒的有利なスナイパー相手に知恵を絞ってどうやって勝つんだろうというワックワクな状況なのに、文字通り単眼鏡を取ってつけて即席スナイパーライフル作ったら勝てました・・・というのは勿体なさ過ぎです。しかも堂々と立った状態でイシャルが撃ち返す描写もあって緊迫感にかける。

実在の戦争をベースにした割に(しかもソレっぽく時刻を出したりしている割に)、戦いそのもののロジックや編集や演出の見せ方のいい加減さが目に余ります。加えて引き伸ばしの面白くないアクション描写がてんこ盛り。

娯楽的解釈をしたB級寄りの映画なのは予告編などで覚悟はしていたものの、このレベルの出来なのは実際に戦った実在の英雄たちにも失礼な下手加減の映画化じゃないですか?と私は感じました。

「バーフバリぽいアクション」をやりたいならば先達の技術をちゃんと学ぶべきだし、出来ないことはしないで普通に「ドラマorドキュメンタリー風」にしたほうがもっと大切なテーマが語れたのではと、残念な思いになってしまいました。

 

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のっち
のっち
ムービニアンズの丸い方。 趣味はゲーム・・・だったけど今はもっぱら映画鑑賞。 洋画を中心に、アニメ、ドラマをよく見る。 最近はインド映画も修行中! 今までに見た映画はこちら

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