映画『バード・ボックス』の感想・レビュー[7896件] | Filmarks
原題:BIRD BOX 上映時間:124分 監督:スサンネ・ビア キャスト:サンドラ・ブロック、トレヴァンテ・ローズ、ジョン・マルコヴィッチ、サラ・ポールソンなど
あらすじ
思いがけず子どもを身ごもったアーティストのマロリー(サンドラ・ブロック)は、ある日突然訪れた世界の終焉と人類滅亡の危機に直面する。残された幼い命を守れるのは彼女だけ。生き残るためにできることは決して“その闇“を見ないこと。マロリーは決死の逃避行を決意する―。引用元:https://filmarks.com/movies/81591
最近youtubeなどで目隠し運転などをして事故を起こしているのが話題になっています。
事故をおこした人たちは、とある映画の影響でそんな無謀な事を行ったらしいのですが、その映画が『バードボックス』Netflixオリジナル映画です。
Netflixは海外で圧倒的シェアを誇るVOD配給会社ですが、『バードボックス』のようにオリジナル映画が強く、他のVODサイトに無いようなオリジナルの映画が沢山あります。
さて、そんな海外で大人気なバードボックス。私も内容が気になったので、早速観てみました。
冒頭の引き込み具合が最高
バードボックスの話の構成は、現在の時間軸の間に、過去の話を持ってくるといった構成になっています。
映画開始早々、よくわからないながらも、母親一人の子ども二人が、目隠しをして緊迫した様子で家から出ようとする場面から始まります。
事前知識が無い状態でみれば、なんで目隠しをするのか分からないものの、必死な様子で子どもたちに「目隠しを取ってはいけない!」というルールを説明する場面から、並々ならぬ状態であることが分かります。
その緊迫感の中、目隠しで前が見えない状態のまま、母と子の3人は船にのって川を下り始めます。
ここで場面が切り替わり、物語は5年前へ。
事件の始まりの時へと戻ります。
何事もなかった日常から始まる世界滅亡
5年前。主人公であるマロリーは思いがけず妊娠しており、妹と一緒に病院に来ていた。
病院の検診が終わって病院から出ようとした時、街中が変貌する。
突如として人々が狂いだし、自分で自分を自傷、自殺していく。
車を暴走させ突っ込ませ、自ら火の中に飛び込んだりと、あっという間に街が崩壊してしまう。
視聴者はどうしてそうなったのか、一体何が原因なのかわからず、一気に物語に引き込まれていく。
特にマロリーを助けようとした女性の様子が突然おかしくなり、自ら燃え上がる車の中に入っていく場面はショッキングだった。
街があっという間に崩壊していく中で、マロリーは助けられ、一軒の家に逃げ込む。
逃げ込んだ家の中で、マロリーは同じく逃げ込んだ人たちとの共同生活が始まる。
パニック映画によくある限られた世界での人間関係
ゾンビ映画やパニック映画ではもはや当たり前となっている、追い詰められた人たちによる、限られた環境での共同生活。
ゾンビ映画だと、階級社会ができたり、暴力的な人間や、相手を騙すような人間など、人間の闇や、人間の本質がよく描かれる展開が多い。
それはバードボックスも同じで、様々なタイプの違う人間が一軒の家に集まることで、様々な問題が発生する。
一番大きな問題として、食料の問題。どのパニック映画でもそうですが、必ずと言ってもいいほどこの問題があがります。
食料が無くなったために、複数人で食料の確保に近場のスーパーへ車で向かうことに。
車はすべての窓を塗りつぶし、全く前が見えない状況で、カーナビだけを頼りにスーパーに向かうことに。
何も見えない状態で何度も道の”縁石”を踏みながら突き進む車。”縁石”を踏み潰すたびに嫌な衝撃が車に伝わります。
それを必死に縁石や、車のクッションが悪いなどと、食材確保に向かうメンバーは何かしらの理由をつけてスーパーへ向かいます。
スーパーはスーパーで「ここに籠城すればいい!」といった意見が出たり、外にいる人間を狂わせる”ナニカ”の狡猾な罠でメンバーの一人が死んでしまったりと、一波乱あります。
その後籠城していた二人が勝手に車を持ち出して逃げ出したりと、結局最後は、人間関係で籠城していたメンバーは壊滅します。
パニック映画のお約束とはいえ、最後に身を滅ぼすキッカケになるのは、やはり人間なんですね。
バードボックスの設定では、目さえ隠していれば死ぬことも無いので、ゾンビよりも難易度は低いと思うのですが、それにしたって結局内部で崩壊してしまえば同じと言うことなのでしょう。
最後の展開はあれでいいの?
最後、3人になってしまったマロリーたちは、無線で安全地帯だと言われていた場所に、決死の覚悟で移動を開始する。
途中気が触れた男に襲われたり、マロリーや二人の子どもを惑わすように幻惑が聞こえてたりと、困難が立ちふさがりますが、なんとか3人は安全地帯に到着します。
到着した場所。それは目の見えない人たちがいる、「盲学校」でした。
「盲学校」では、生き残った健全な人々や、盲目の人たちが、まるで天国のような場所で平和にくらしていました。
そこで初めて二人の子どもたちは、名前を貰えます。(それまではボーイとガールと呼ばれていた)ここで二人は初めて自分以外の子どもや目隠しをしなくてもいい環境を与えられ、平和に暮らしていく。
というエンディングです。
前半の盛り上がりに対して、最後のオチが「盲学校」は平和だった。という内容にイマイチな感情を思う人もいるかもしれません。
私自身、前半の盛り上がりが凄かった分、最後はどうなるんだ!?と期待していて、突然「盲学校」は平和だった。と言われて「うーん?」といった、分かるけど、イマイチスッキリしない感想を抱きました。
ですが、監督が言いたかったのはこういう事ではないかと思うと何となく納得出来る気がします。
世界が滅亡するような悲惨な状況で、日常的に目隠しをしないと生きられなくなってしまったこの世界。
ですがそれは盲目の人にとっては日常的なことであり、目が見えなくなったところで今更悲惨な目には合わない。
むしろ毎日がその状態である盲目の人たち。
たとえ目が見えない状態に陥っても、人間は力強く生きていける。
そんな事を監督は伝えたかったのではないでしょうか?
『盲目の人たちの世界を知ってもらうための映画』だと思えば、最後のオチも納得出来る内容です。
正体は一体何だったのか?
結局世界を崩壊させた、観た人間を殺すこの現象の正体は何だったのか。
正直なところ、正体は良く分かりません。
神か、死神か、悪魔か。もしかしたら宇宙人かもしれませんね。
ただ、車が接触警報を出していたことから考えるに、ある程度形をもった”ナニカ”である可能性が高いです。
ですがこの映画は、この現象の正体を解明するような映画では有りません。
突如視界を奪われた人間がどのように生きるのか、極限の場所で人間はどのような選択をするのか、といった人間の生き様を描いた映画です。
現象の正体を知る必要は無いと言えます。
バードボックス感想まとめ
面白い映画でした。
特に冒頭の3人で川を下る場面から始まり、5年前に戻って世界が終わる日から描かれていくスタイルは、マロリーがどうして3人になって、川を下る事になるのか。
視聴者に疑問を抱かせ、物語に集中させる上手い手だと思います。
冒頭の入りが面白かった分、中盤からの展開が想定通りで進むので、イマイチ盛り上がらりません。
最後も冒頭の盛り上がりで期待値が上がったものを落ち着かせるには少し物足りませんでした。
ですが、さすがベテランの俳優陣。各々の鬼気迫った演技はさすがです。
常に気を張っていて、なんとか子どもたちを生かそうと、必死になっているマロリー。
そんなマロリーを演じる「サンドラ・ブロック」の演技が神がかっていました。
『バードボックス』の良さの半分は、「サンドラ・ブロック」の演技かもしれません。
もう半分は「設定」と「他の役者の演技」です。
話題になっていたので観てみた映画でしたが、楽しむことが出来ました。
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