監督:須藤友徳
キャスト:杉山紀彰、下屋則子、神谷浩史、川澄綾子、植田佳奈
あらすじ
10年ぶりに冬木市で始まった戦争は、「聖杯戦争」の御三家と言われた間桐家の当主・間桐臓硯の参戦により、歪みが生じていく。一方、魔術師(マスター)として参戦していた衛宮士郎は傷つき、英霊(サーヴァント)のセイバーを失ってしまう。それでも士郎は、桜を守るため戦い続ける。そんな士郎の身を案じる桜だったが、彼女自身もまた、魔術師の宿命に捕らわれていく。
引用元:https://eiga.com/movie/88009/
最高傑作更新! 桜と士郎の内面を描き切った最高の映画でした!
fateシリーズ最新作
『劇場版 Fate/stay night Heaven’s Feel II. lost butterfly』を観てきました!
前作HF1はFateシリーズ最高傑作だとした私でしたが、2章も大変素晴らしい内容でした。
早速感想を紹介したいと思います。
1章の感想はこちら
ネタバレをふんだんに含みますので、注意してください
HF2の出来は?
控えめに言って、
最高の出来でした!!!
1章でも最高傑作だと言っていた私ですが、それを軽く超えてきた感じです。
一言で言うなら
狂気と恐怖と愛を混ぜ込んだ狂乱の映画
特に桜好きにはたまらない映画でした。
序盤の印象的なシーン
HF1最後、セイバーの敗退後から始まったHF2。
エミヤ邸の前で桜が士郎を待つというシーンで終わりましたが、その続きからとなります。
序盤の印象的なシーンの一つで、子供の頃の桜が電車に乗っている場面がありました。
桜の乗っている電車と、反対側に遠坂の家族3人が仲良く電車に乗っている場面。
遠坂の3人は、楽しそうにしているも、桜はひとりぼっち。
そのうちに遠坂たちが乗っている電車は桜とは逆方向に進んでいってしまう。
必死に追いかける桜だったが、すでに別の方向にしか進まない電車に乗ってしまっている桜は、決して遠坂の人たちに追いつくことは出来ない。
そして桜の乗った電車には、世にもおぞましい化物がいて・・・。
この場面が、まさに分かりやすく桜の心情を表していた。
そりゃそうで、家族と仲良く暮らしていたのに、1人だけ捨てるように遠坂を追い出され、迎えられた側では口にしたくも無いような酷い仕打ちを日々受ける事になる。
そりゃ世の中を怨みたくなるのも分かる話です。
そこで見つけた唯一の救いが、士郎との出会いでした。
重要なアイテムである衛宮邸の「鍵」
桜が士郎の前に現れたのは、臓硯に命令され、士郎を監視するためだった。
だがそこで士郎の優しさに触れ、士郎から今後も家に来て良いと鍵を受け取る。
今まで様々なものから捨てられてきた桜にとって、この鍵は自分を必要と初めてしてくれた存在であり、信頼する先輩からの信頼の証であり、汚された自分への許しであった。
この時はじめて桜は人間らしい表情を取り戻すことになる。
HF2ではこの鍵が何度も登場し、桜と士郎の間を繋ぐまさにキーアイテムとして登場します。
HFが聖杯戦争が始まる時までこの二人が一緒に居たのは、監視という名目ではなく、士郎が桜に鍵を渡したから。この鍵が二人を結びつけていました。
ですがHF2序盤、桜は慎二に人質に取られ、魔力が暴走し士郎を傷つけてしまう。
自分が居ると士郎を傷つけるとして、鍵を返す。
家に戻ることも出来ず、衛宮邸にも帰れない。
ひとりぼっちで何処にも居場所を無くした桜だったが、士郎は桜を見つけると、鍵を桜に返して一緒に居ることを選択するのだった。
そして終盤、桜は再び鍵を置いて衛宮邸を出ていく。
このように、二人の関係を『鍵』というアイテムでわかりやすく表現し、鍵を通じて視聴者に二人の関係を暗示させていました。
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雨の中の二人、変わる二人の関係
いままでのFateシリーズの主人公である士郎とHFの士郎が大きく変わる転換点となるのが、桜が鍵を置いて出ていき、それを士郎が追いかける場面です。
ここで士郎は桜に「桜だけの正義の味方になる」と言います。
今までの士郎だとこんな事は言わないんですよね。
あくまで正義の味方であって、誰か一人のための味方では無かった。
だけど、HF2のこの場面で士郎は初めて一個人として桜を見る。
そして桜を守ると決意します。
この場面から桜と士郎との関係がスタートしていきます。
大迫力の過去最高バトル
UFOtableの描くバトルシーンはよく動き、大迫力だというのは昔から言われていますが、それはFateシリーズも同様です。
空の境界、FateZero、FateUBW FateHF1のセイバーとバーサーカーのバトル、ランサーとアサシンのバトル、そしてライダーとアサシンのバトル
どれもfateシリーズのバトルは大迫力でものすごかったのですが、
今回のセイバーオルタ(闇落ちしたセイバー)とバーサーカーとの戦いはそれを軽く凌駕していた。
バトル中はもう凄すぎて口が開きっぱなし。
正に真の最強サーバント二体が全力で戦えば、こんな事になるのかと見せつけられた感じでした。
出るわ出るわ、セイバーオルタからビームの嵐! それに真っ向からぶつかって行くバーサーカー!
何度死んでも立ち上がるバーサーカーの気迫は物凄いものを感じさせる。
だがそれを物ともせずバーサーカーを12回殺し尽くしたセイバーリリーの強さ。
いくら聖杯と繋がっているとは言え、半端ない強さ。
最後の宝具解放は、それこそHF2バトルの中で最高に相応しいものだった。
ですが、HF2の本題はバトルではありません。
バトルはバトルで凄いのですが、
むしろバトルは本題の前のちょっとした前菜でしか無いのです。
本題は「桜の心の闇」と、それに「士郎がどの様な解答を出すのか」
この2つがHF2の本題と言えると想います。
桜のファンタジーワールド(悪夢)
劇場見ていると、突然ファンタジーな世界に桜が入ってしまう。
最初こそ桜が士郎と1つになって、嬉しさからの心象風景かと思っていたが、観ているうちにどうにもおかしな描写が多かった。
桜の周りをうろつく人形たちはどこか気味が悪くい。
橋を渡るシーンではまるで死体のように動物の人形が川に流れている。
この川は冬木の大橋では無いだろうか。
流れている人形は、今まで喰らってきたサーバントでしょうか。
そしてそこで城?の中に入りなかで奇妙な人形と遭遇。
ドレス姿の可愛い桜が怒って見せているシーンはとても可愛らしかったが、この辺りで私はこの人形が実は人間なのでは無いかと薄々思っていた。
結果は映画を観た人はご存知の通り、桜が人形をデコピンで吹き飛ばし、パンッと破裂して中から出てきた沢山の飴玉。
その飴玉を嬉しそうに頬張る桜だったが、
実際に吹き飛ばしたのは人間で、出てきた飴玉はバラバラになった人間のパーツだった。
おおぅ。
グロい! グロいし狂った感じが怖い!
夢うつつながらも人の指を頬張っている桜の映像は、今までの可愛い存在であった桜を、一気に人でないナニカ別の化物へと押し上げた。
桜の内面を理解するには分かりやすい描写だけど、ギャップがすごいよUFOさん!
狂気具合が半端ないのが良くわかる素晴らしい演出でした。
正義の味方か、桜の味方か
士郎は今まで正義の味方を目指していた。
それは[stay night] [unlimited blade works]でも同じで、どちらも正義の味方として、悪と戦う決意をし、悪を打ち倒す。
正に正義のヒーローを今までの2つのルートでは行ってきたのだ。
だが今回のHF2では、人を喰らい、街を滅ぼすのは士郎の後輩であり、愛すべき人でもある桜。
序盤の雨の中の場面では、桜だけのためのヒーローになるとは言っているものの、その桜自体が悪となった時、ヒーローで居るかどうかは決められていませんでした。あくまでも善良な人を守るためのヒーローでしかなかった。
だが悪となってしまった桜。
その桜を助けるという事は、憧れであった衛宮切嗣への裏切り、今までの自分への裏切り、そして未来の自分への裏切りに他ならない。
HF2終盤。
桜が冬木の住民60人以上を喰った場面で、士郎は住民を喰ったのが桜だと知る。
桜を殺さなければ、さらに冬木の住民が桜に殺されることになる。
そう分かっていながらも、結局士郎は桜を殺すことが出来ず、
むしろ今までの目標であった正義の味方を裏切り、桜だけの味方を目指した。
劇場中では、英雄を目指した士郎が言った「裏切るのか?」という言葉に、
さらっと「裏切る」という言葉を言った。
この選択が、今までのルートの士郎とは逆を行く、他の2つのルートのアンチテーゼとなる主人公が生まれた瞬間だった。
さらっと言葉を返していた士郎だったが、込められていた想いは今までの自分を構成した全てを切り捨て、桜のためだけに生きる。という決意が込められている。
それだけの決意なのに、劇中では本当にサラッと言ってしまう。
どうしてこんなに簡単に言うのか? 本当ならもっと気合を込めて言うような場面じゃないのだろうか?そう思っていたのですが、
この場面。士郎の中では『桜の味方になる』ということは既に決定事項だったのでしょう。
だからこそ、気合を込めた言い方ではなく、サラッと言った。
もう決めてしまった事柄に、今更気合を入れる必要など無い。
だから軽い口調で言ってのけたのでは無いか。そう思います。
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ギルガメッシュは癒し
さて、桜の食事中に現れたギルガメッシュ。
fateシリーズでは最強のサーバントの一体であり、別ルートの物語では、ラスボス的存在であったギルガメッシュが、今回は最もアッサリと死んでしまう。
ここは原作プレイした時は余りの呆気なさにビックリしたのを覚えています。
今回も凄くアッサリ逝ってしまわれたギルガメッシュ。
何しに来たんだよ!
こうなるのが分かってたのならもっと早く殺しとけよ!
と言いたいが、慢心してこそがギルガメッシュとも言えます。
ですが何だかんだ彼が死んだことで英霊3体分にもなり、聖杯が満ちてしまったことを考えれば、ギルガメッシュの本当の凄さも分かる。
慢心さえしなければどのルートでも勝てただろうに!
もう1人のヒロイン
本作にはヒロインとして桜がいる。
だがもう1人実はヒロインがいるのだ。
それは「ワカメ」こと間桐慎二である。
fateシリーズでは毎回悲惨な目にあう慎二だが、HFでは1章から慎二に焦点を当てられていた。
慎二も名門魔術家に生まれたものの、魔術のセンスが無く全く扱えない。
その事にコンプレックスを抱き、自分こそが間桐家の次期当主であると虚勢を貼るしか出来なかった。
家族の誰からも必要とされない。
必死に努力し、魔術の知識をつけ、間桐の当主たらんと努力したいた慎二。
そんな中、魔術の才能をもつ桜が現れ、コンプレックスを加速させる。
コンプレックスから桜を虐待し、結果、より桜の闇は深くなっていく。
慎二もコンプレックスを高め徐々に捻くれていっていたが、それでもワカメには士郎という友達がいた。
士郎が英雄という憧れを追いかけず、ワカメという友達の事をしっかりと見てあげていれば、ワカメはここまでグレることは無かっただろう。
だが士郎は英雄願望から、誰の頼みも断る事なく受けたり、自分の真意を表に出さなかった。
それがワカメには、『自分は士郎に心から信じられていない』という思いを抱かせ、士郎に辛く当たる事となる。ようは寂しがりやだったわけですね。
こうしてシンジはさらに孤立し、孤独感を感じ、自分を家族から、桜から、そして士郎から認めさせる!
という思いが悪い方向に歪んでしまった。
聖杯戦争が始まり、自分より格下に見ていた士郎が、自分よりも強いサーヴァントを使役していたり、HF2で慎二との戦闘で、士郎が腹に魔術を使って強化した本を入れているのをみて。
自分が下にみていた士郎ですら、実は魔術が使えるということを知ってしまう。
捻くれに捻くれたワカメは、最後桜を犯そうとし、拒絶した桜に殺される。
今までの2つのルートでは悲惨な目にあいつつも、何だかんだ死ななかったシンジでしたが、唯一死ぬのがHFです。
桜も可哀想ですが、シンジも可哀想な奴なのです。
誰か1人でもワカメを信じ構ってあげていれば、シンジはここまでひねくれる事はなかったでしょうに。
だがそれでシンジと桜が救われるかと言うと、臓硯がいる限りそうでも無い。
つまり、臓硯がいるかぎり二人に幸せにはなれないのです。
メインテーマがヤバイ

映画本編が終わって、メインテーマであるAimer 『I beg you』が流れた。
予告編で何度も聞いていたが、フルで聴くとその歌詞の内容が映画と完璧にマッチしていて驚かされた。
てかヤバイ
どこかエキゾチックで、闇を感じさせる歌詞と音楽は、
まさに桜の内面を歌った歌です。
HF2の総まとめ。
桜の気持ちを歌った素晴らしい歌で、一気に魅了されました。
HF2は最高傑作だった まとめ
私の中ではfateシリーズの最高傑作を前作から更新した内容でした。
本当に最高だった!
桜の内面をこれ程までに描き、狂気に染まっていく様。
士郎と一緒に居たいと思いながらも、それは出来ないと士郎の元を去ろうとする桜の心情。
そんな桜を助けようとするも、その行為は自分を構成する英雄願望を否定する事に苦悩する士郎。
これらをこれ程までに完璧に描ききるとは、正に最高傑作と言っていい!
欠点ひとつない映画でした。

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