原題:Godzilla:King of the Monsters
上映時間:132分
監督:マイケル・ドハティ
キャスト:カイル・チャンドラー ベラ・ファーミガ ミリー・ボビー・ブラウン ブラッドリー・ウィットフォード サリー・ホーキンス 渡辺謙など
あらすじ
日本が生んだ怪獣王ゴジラをハリウッドが映画化した「GODZILLA ゴジラ」(2014)のシリーズ第2作。
前作から5年後の世界を舞台に、モスラ、ラドン、キングギドラなど続々と復活する神話時代の怪獣たちとゴジラが、世界の覇権をかけて戦いを繰り広げる。また、それによって引き起こされる世界の破滅を阻止しようと、未確認生物特務機関「モナーク」に属する人々が奮闘する姿を描く。
「X-MEN:アポカリプス」「スーパーマン リターンズ」などで原案や脚本を担当してきたマイケル・ドハティが、脚本を手がけたほか自らメガホンもとった。
前作から引き続き、芹沢猪四郎博士役を演じた渡辺謙が出演するほか、カイル・チャンドラー、ベラ・ファーミガ、サリー・ホーキンス、チャン・ツィイー、大人気ドラマ「ストレンジャー・シングス」のミリー・ボビー・ブラウンらが共演。
引用元:https://eiga.com/movie/88330/
6月2日 TOHOシネマズ くずはモールにて字幕版を鑑賞 [ 100/100点 ]
「あんまり興味なかったけど」とか「前作がイマイチだor見ていない」など、そんな前口上を口にしつつも、やっぱり気になってしまうゴジラの新作。
私は今回の「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」を見るにあたっては、前作をレンタルで再復習した上で望みました。
結論としてはそんな予習とか、なんなら前作も見る必要がなく、「誰でもかかってこいや!」という驚異的な懐の深さでもてなしてくれるスーパー娯楽怪獣映画でしたね!もう最高だよ!!
「アベンジャーズ/エンドゲーム」が11年の集大成ならば、「ゴジラ キングオブモンスターズ」は65年間怪獣王であり続けた貫禄を見せつける大傑作だと思います。「俺が65年間、愛される理由を見ろ!」とゴジラ様がのたまう様子が目に浮かびます。
楽しんだだけでなく、途中うっかり涙も溢れてしまった本作について綴ります。
本記事はネタバレが含まれる上に、プロレス的観点からの文中表現が多々あります。ご注意ください。
絶対的なヒーロー怪獣として再定義
今回のゴジラは明確に「人間の味方ですよ~」という立場をとっていた。最初の登場シーン、海中のモナーク前進基地での邂逅からしてベビーフェイス(善玉)をアピールしていました。
前作「GODZILLA ゴジラ(2014年ギャレス・エドワーズ監督)」では、ゴジラの上陸シーンにて津波が押し寄せ過失とはいえ一般大衆の人間とのファーストコンタクトが最悪の形で印象付けられていました。初代ゴジラのオマージュも多めでしたので、やはり人知を越えた存在であり「コミュニケーション不能」「分かり合うのが難しい生物」として描かれていました。
レスラーで例えると観客にも平気で暴言を吐くダーティなやつ。前作の対戦相手だったムートーが明確なヒールだから、ゴジラは一応はヒーローぽい立場にいましたが、心からは応援できませんでした。
試合内容もフィニッシャー(必殺技)は美しく決まって格好は良かったものの、その後の退場シーンもぶっきらぼうにリングを後にした感じで印象悪いなと。あんまり応援する気になれんなと。
ところが一転して今回は「手を出さなければ襲わない」「分かり合えるかもしれない怪獣」の側面が強く強調されていました。この「分かり合えるかも」の部分はモスラも同様でしたし、ギドラは逆に「分かり合いたくもない絶対悪」と反転して見せていました。
人間を無闇に襲わない姿勢を見せることで「これはゴジラ選手、まさかの完全ベビーターン(善玉転向)宣言なのでは…?」と私は受けとりましたね!「この映画ではヒーロー怪獣のゴジラやるぞ!」というメッセージが潔くて大好きです。
あとこの人間とゴジラの邂逅、襲わない一方で必ず去り際に一発かましてくる感じも好き。海中ではドンと威嚇してみせたり、会場でもしっぽで叩いてみたりと、番長感があるオラつき。ゴジラ先輩が肩を風を切って去っていくのがいかにも「俺は王やぞ!」というヤンキー味があっていいですね。
「ゴジラ対モンスター・ゼロ」 初戦から熱いぞ!
さて待望の怪獣プロレス第一戦「ゴジラ対モンスター・ゼロ」!
ここの登場シーンは正直言ってタイミングとかも含めて人間側に都合良過ぎで、というか本作のゴジラ登場シーンはほぼ「人間を格好いいタイミングで助ける」で統一されています。
個人的にはご都合云々はもう関係なく「格好いいからいいだろ!」と作り手側に言われて「YEEEEEES!!」と答えるしかないです。一周回っていいというか、アクアマンの爆発と同じ原理というか。

まあとにかくこの初戦には本作の縮図が込められていました。ゴジラが味方であり、ギドラが敵であり、この2体のざっくりとした戦力比較。人間側のドラマも本当に追うべき裏切り者は誰なのか、その目的などが明示されました。
これらを怪獣プロレスを進行しつつ、その激しい取っ組み合いに巻き込まれながら人間側のドラマ展開も勧めつつという、なかなか難度の高いアクションをやってのけていたのではと思います。前作の見せ方が怪獣シーンと人間シーンを交互にゆっくり見せていた感じが強いので特に違いを感じました。
まあそんなストーリー進行やアクション演出の巧みさは置いといて、この初戦の初手に注目していただきたい!
体をぶつけ合ってからの掴み合いから入るんですよですよ!これが良い!
ヘリを挟んで画面の両側から走り込んでの激突がもう最高で、私はもう心の中でゴングを鳴らしましたね。試合が始まった!という感激がありました。
そこからのもう熱戦を吐く時のお互いのタメの見せ方とか、もろにゴジラがリングから落ちてしまうシーンも有って、まさに見たいものがココに!状態。結末も初戦らしく、没収試合の上でヒール側が逃げ帰ってしまうお決まりの展開。ど定番でリマッチへの期待を煽ります。
そういえばこの初戦におけるギドラ選手のリングネーム「モンスター・ゼロ」は昭和時代に登場した際、宇宙人側から呼ばれていた名前ですね。子供の頃にVHSで見ていたので、うっすら聞いた名前だと思いましたが、後から調べて小ネタであることに気づきました。
こういう小ネタが海を渡っても作品に散りばめてくれているのは、分かってしまうと素直に嬉しいですね。
第2戦:反則のオキシジェン・デストロイヤーと芹沢博士
第一戦の南極リング後は世界を順繰りに回りながらゴジラと共に悪い奴らをチェイスする展開ですが、このスケール感の大風呂敷は素晴らしいです。ある意味本作の特徴かと思います。
第2戦が南極から売って変わってラドンの住処である火山に、空中戦でのラドンVS戦闘機部隊。そしてラドンVSギドラへ移行、さらにはゴジラ登場まであるので目まぐるしいですね。
特に空中戦においてはCGアニメ映えの勝負ですので、圧倒的なクオリティでしたね。ラドンの縦横無尽な飛行で戦いにならない戦闘機とか大好きです。そのラドンもギドラ相手ではやはり戦いにならないという、一瞬にして格付けを済ませるこの場面も素晴らしいというか。
海に落ちたラドンがどうなったか心配していたら、次のシーンには火山の下でお辞儀していたあたり、サンシタ感があって大好きです。
さて肝心のゴジラ戦ですが人間側のマッチョ思考で、完全に邪魔が入ってしまいますね。本当に唐突なオキシジェン・デストロイヤー発射でした。
このオキシジェン・デストロイヤーの使い方と後述する芹沢博士の核爆弾、普通に考えると兵器としては逆だと思うのです。頭の固い軍人さんが核を、核兵器に嫌悪がある因縁のあるオキシジェン・デストロイヤーという架空の兵器を芹沢博士が使うという構図です。
本作はもろもろの設定の使い方が上手く、これら兵器の立ち位置を逆転した上で「初代ゴジラ」ネタを引用してみせるという工夫が効いています。
原点に立ち返る海中神殿:日本と初代への敬意
オキシジェン・デストロイヤーで大きく傷ついたゴジラ。
そこにモナーク一行が潜水艦で侵入するわけですが、休んでいた神殿の壁画にもろに「ゴジラ」とカタカナで書かれていたのが印象的でした。普通に考えてそんな古代神殿にカタカナがあるのはおかしい。
監督のマイケル・ドハティ自他ともに認める超ゴジラオタクだそうで、この神殿の壁面にカタカナを置く意味がそれなりにありそうです。
個人的な解釈としては、あの「古代においてゴジラが崇拝されていた場所(神殿)」とは、かつて「ゴジラ映画が隆盛だった昭和と平成の日本ゴジラのメタファー」ではないかと。彼が一度帰った「家」とはゴジラが誕生した原点たる日本のゴジラ映画シリーズではないかと思うのです。
監督も含め、ゴジラという神に魅了されたファンたちの崇拝する神殿。芹沢博士はここに単身で潜り込むのです。
渡辺謙が今回演じる芹沢猪四郎博士は、初代1954年「ゴジラ」でオキシジェン・デストロイヤーを抱いてゴジラを倒すために自己犠牲を払った芹沢博士と、この初代ゴジラ(1954)を監督した本多猪四郎氏の名前から取られたもの。
初代ゴジラのラストではオキシジェン・デストロイヤーを開発した芹沢博士自身が、新兵器とともに海中へ潜り、ゴジラを死に至らせたのです。
今作の芹沢博士の死に方はまさにこの初代のオマージュであり、その場所をかつてゴジラが崇拝されていた「ゴジラシリーズへの敬意を表す神殿」に選んだことが、なぜか分からんが感動するという状態にさせられました。
また更に言うなら、前作は「災害としてのゴジラ」がまだ強調されていたのとは一転して、今回は明らかに怪獣プロレス&VSシリーズに重きをおいた「ポップカルチャーとしてのゴジラ」。
前作を含めたここまでの芹沢博士とゴジラの物語を一度終結し、いよいよ怪獣バトルシフトを推し進める「モンスターバース」の名を世界へ知らしめに飛翔する!
ゴジラが復活した際に、待ってましたとばかりにかかる伊福部氏の原曲をアレンジしたBGMがかかるところで私は泣きました。ええ、泣きましたとも・・・なんか嬉しくて。ここまでゴジラ愛の暴風雨に私は泣いたんです。
公式よりゴジラ復活の時のBGM「Rebirth」!なぜか泣けるんだよなあ・・・。
「ゴジラ&モスラ VS キングギドラ&ラドン」タッグマッチが熱い!
ラストのボストン戦はリング入場(上陸)から上がりっぱなし!今度は人間部隊を引き連れてということもあり、めちゃくちゃ頼もしい。ヘリやら飛行機やらを従えているのがもうレスラーのエントランス時における綺羅びやかな照明にしか見えないんですよね。
そして入場からの掴み合いですよ!パワーアップしたゴジラの力任せに突進する感じがもうたまらんですね、真っ向勝負ですよ。
この勝負の中で特に好きなのが、ギドラの必殺放電攻撃を受けた後のグロッキー状態ゴジラ!
もうこの場面なんか「相手のフィニッシャーをもろに食らいながらも、なんとかフォールを2.9カウントで返し、でも立ち上がる体力はなくリングロープに寄りかかって休んでいるレスラー」にしか見えなくてマジで最高なんですよ!なんならこの場面のゴジラはちょっと老けて見えましたからね!人間味ありすぎてそこがいい!
公式よりボストン決戦のBGM!アガるぞ!!
そういえば人間サイドのドラマは終始邪魔をせず、終始ゴジラたちを主人公としてのサブプロットにとどまっていたのがやはり好感度高し!この最終戦も所詮と同じく見事でした。
人間側のゴタゴタが起きた結果が、全て怪獣たちの次の展開やアクションを呼び込む装置に徹されています。家族がテーマのお話も、アメリカンなテイストでありかなと。
「ボストンの家」というキーワードを序盤から置きつつ、しっかり回収した丁寧さもよし。子供が恐怖に怯えてパニックになったとき、家へと帰ってしまうというのも、個人的に納得できましたよ。
本当に今作に限って言えば、こういう人間ドラマが怪獣プロレスの試合を邪魔しないのがいいよねって話ですよ!
メインのレスラーについてきてリングサイドにいるはずのマネージャーが、途中で凶器持って来て乱入して試合中断やら反則負けで苦い結果になるとか、もう最悪じゃないですか?第2戦の火山&海上戦がまさにそんな感じでした。
そういうモヤモヤする要素が最終戦は一切なくて、あくまでもゴジラとギドラ(&モスラとラドン)がリング内でしっかり戦う!
おまけのマネージャーたる人間達はリングサイドで人間同士戦ってるというのがお行儀よくて最高です!
怪獣サイドの話に戻すと、とにかく見せた絵がいちいち最高ですね。バーフバリ的と言っても良いような宗教絵画のような色彩と構図とか。モスラなんかは本当に神々しい光りに包まれての登場ですね。
モスラとラドンの予定調和な空中戦が激しくて楽しいとか、途中でギドラがもろにゴジラへチョークスリーパーを決めに行く場面もあったりでワクワクが止まりません。
モスラの犠牲からパワーをもらってバーニングゴジラに変化する過程も、「ゴジラVSデストロイア」でラドンからパワーを貰った時のオマージュだったと思うのですが、とにかく展開が分かっていても熱いですね。
赤いバーニング状態でのトドメが熱戦じゃなくて、全身からのドーム状熱波だったのが若干残念で、「え~~これがこの映画のトドメかよ、分かってねえな。や~~~~~っぱハリウッド分かってねえな」と1分ぐらい手のひら返しましたけど、すぐにまた手のひら返しましたね。
「ギドラざっまああああ、Yeeeeeaaaaaaaah!!!!」
マイケル・ドハティ監督分かってましたわ。さすがです、これが見たかったんです。トドメは熱戦が欲しいんです。ありがとう(涙)
ゴジラに頭を垂れる雑魚怪獣と一緒に、私も監督に心の中で頭を下げました。一瞬でも疑ってごめんなさい。
エンドロールの追悼 「怪獣らしさ」とは何か
エンドロールを途中退場しないでご覧になった方はご存知かと思いますが、ラストのラストでスーツアクター中島春雄さんの追悼が会ったのは熱いものがありました。
まさに本作はザ・ゴジラの中の人である中島さん追悼にふさわしい一作だと思うからです。
本作の怪獣はみな人間味のあふれた演技をしていました。それは本記事で書いたようなレスラー的にまで見れてしまうほどに人間くさい戦い方をする場面もしかり。
あるいは本作で強調された怪獣の目の表現は、観客がその意志を汲み取れるほどに豊かな表現がされていました。似たところだと「猿の惑星」新三部作でしょうか。
「猿の惑星」新三部作の場合は人間に非常に近い知性を獲得した猿の目ですが、本作の怪獣たちも明らかにそのレベルの知性を垣間見せる目をしていました。本作の要所でゴジラ、モスラ、ギドラの目をクローズアップしていたのは意識的な撮り方です。
そして人間味が行き過ぎてしまって、先にも書きましたがゴジラに怪獣たちが頭を垂れるという冷静に考えるとちょっとおバカなシーン、「ただの野生生物なら取らない行動」を見せました。
これらから見るに、明らかに着ぐるみや操演で作られていた時代の「怪獣」を狙って作っていて、良くも悪くも「生物らしさ」から離れようとしていたように私は思いました。初代「ジュラシックパーク」以前の「怪獣」には、常にその存在の背後に「人間の気配」が見え隠れしていたように思うのです。
「キング・オブ・モンスターズ」ほどまでに「怪獣らしさ」を突きつめたとき、「人間味」へ行き着いたのは大正解だと思いますし、本作の4体の大怪獣が激突するというテーマと合致した方向性だと思います。
だからこそ、初期ゴジラの本人と言っていい中島春雄さんの追悼や、クレジットで本作に登場したゴジラを始めとした怪獣たちの出演者欄を「HIMESELF(本人)」と表記した一貫性がとかく感動もの。
オタクの”粋”、お祭りの”粋”、”粋だった日本”というものを本作のつくり手がわかりすぎている!これにつきる!
日本人の一人、かつてゴジラが大好きだった少年として、称賛しかできないですし文句なしの100点でございました。
まとめ:モスラの歌は”語尾”を上げたくなるよね
モスラの歌(1961「モスラ」オリジナル・サウンドトラックより)(ステレオ版)
まとめというより余談です。
エンドロールでかかるモスラのテーマ、いいですよね。子供の頃に覚えて、友達と歌った記憶があります。
最初はシンプルな原曲の再現。そしてBGMの1分経過あたりから、歌でいう2番めに入ります。
ここの2番のアレンジがすっごい良くて。あの「もすら~~~”ヤッ”」の部分をめっちゃ高音にする感じが大好きで大好きで。
実際歌うとオリジナルよりも音程上げたくなっちゃうんですよね、”ヤッ”だけ。
こういうところまで分かっている映画なので、自分の中では既にBD購入決定!映画館にもどうにか合間を縫ってまだまだ足を運びたいとおもいます。
大傑作だぜ!!


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