新海誠監督の作品『星を追う子ども』を今更ながら観たので、感想を書いていこうと思います。
今までにない新海誠の作品として、中々面白い映画でした。
あらすじ
父親を失った主人公アスナは、いつも一人山奥の岩肌突き出す崖の上で、父の形見の鉱石を使った、鉱石ラジオを聞いていた。
そんなある日、いつものように山に向かっていると、鉄橋の上で一匹の化物と遭遇してしまう。襲われて殺されそうになったとき、一人の少年(シュン)が現れアスナを救う。
アスナはその少年に惹かれてゆくが、その少年は突如として姿を消してしまう。
それと同時に、アスナの通う学校に一人の男(森崎竜司)が赴任してくる。
その男は、正体不明の少年(シュン)を追っているようだった。
シュンが消えて落ち込むアスナだったが、そこにシュンそっくりな少年(シン)が現れる。それと同時に武装した男たちを率いて現れる森崎竜司。
アスナとシンは森崎竜司から逃げるようにして、現実とは隔離されたアガルタ(地下世界)へと迷い込む。
タイトルの意味
タイトルである『星を追う子ども』とはどういった意味なのか。
人はよく「死ぬと星になる」と言います。
本作の内容は「死者に会いに行く物語」です。
つまり「星=死んだ男の子 を追いかける子ども」という意味になります。
「追いかける子ども」とはもちろん主人公であるアスナです。
そして星になったのはアスナを助けてその後死んでしまった少年シュン。
アスナはシュンを生き返らせるためにアガルタを旅するのですが、旅するアスナに同行する形で、もうひとりの人物。武装組織を指揮しており、アスナの教師でもあるモリサキが出てきます。
モリサキの目的も死者の復活。
モリサキは最愛の妻を生き返らせるためにアガルタの力を欲します。
星になってしまった二人の最愛の人。
その二人を生き返らせるため、死と繋がる場所まで死者を追いかける。
というのが、このタイトルの意味です。
キャラのデザインに違和感
まず映画を観て最初に思ったのが、キャラクターデザインの違和感でした。
新海さんの映画のキャラクターはどれも独特な絵柄ですぐに分かるのですが、この『星を追う子ども』は特に違って見えた。
なんというか、絵柄が古臭い気い。
今までの新海誠作品のキャラクターたちは、どこか塗りがのっぺりしてはいたものの、現代風の絵柄だったが、どういうわけか『星を追う子ども』は20年ぐらい昔に戻ってしまったかのような絵柄をしている。
観ていて30分ぐらいはこの絵柄に違和感を感じていたものの、観ていくうちに不思議なことにこのキャラクターデザインに違和感を感じなくなっていた。
デザインに慣れたとも思ったが、違和感を感じなくなったのは、舞台が地下世界(アガルタ)に入ってからだった。
そもそも時代設定も1970年代と昔であること、そして地下世界ではなく、地下世界で違和感が出ないよう考えられてデザインされたため、アガルタ(地下世界)に入ってから違和感を感じなくなったのではないかと思います。
どうやら、敢えて昔ながらを感じさせるデザインにしていたようです。
打ち合わせの段階から、作画監督・キャラクターデザインの西村貴世さんと「意図的に世界名作劇場を連想させる絵にしましょう」と話し合いました。
出典:https://www.anikore.jp/features/shinkai_2_6/
新しい今風のデザインではなく、幅広い方に観てもらえるよう、また世界名作劇場から引き継がれてきた日本のアニメーションの典型的な一つのかたちを引き継ぐ形としたかった。
とのことのようです。
確かに昔ながらの世界名作劇場を、現代風にアレンジしたかのような作風かもしれません。
これはジブリのパクリ?
さて、本作の感想を観ていると、いたるところで「ジブリのパクリだ!」という声を聞きます。
確かに私も映画を観ていて、ジブリと同じようなデザイン、設定、場面が多く有ると感じまし。
例えばジブリでお馴染みキツネリスにそっくりな「ミミ」や、ラピュタに登場するロボット兵かのような「ケツァルトル」
アシタカが村から飛び出す時と同じように村から出ていく「シン」など、到るところにジブリのオマージュ的なシーンが点在します。
これに対しては新海監督本人も
『今作を製作するにあたり、ジブリに影響を受けたんですか?』 (質問者:SEEDの歌姫さん)
新海誠
はい。ジブリ作品はアニメ制作者にとって一番大きな存在でもあると思います。今回の『星を追う子ども』ではジブリ作品を連想させる部分が確かにあると思うのですが、それはある程度自覚的にやっているという部分もあります。
出典:https://www.anikore.jp/features/shinkai_2_6/
とこのように、本人も言っています。
じゃあ丸々パクリで、シナリオもまるっきり同じような話か?
というとそうでもない。
舞台は地上世界と地下世界であったり、様々な神話に登場する生き物たちが、アガルタの門番であるという設定、日本神話を取り入れた物語の構成など、新海誠監督独自の価値観や世界観をしっかりと取り入れられています。
ジブリをパクったわけではなく、ジブリに影響を受けた上で、
新海誠監督の世界観のもと作られた新しい冒険ファンタジー映画こそが『星を追う子ども』です。
アスナは本当にシュンを生き返らせたかったのか?

映画を観ていて思ったのは、アスナは本当にシュンを生き返らせたかったのか?でした。
ときに命を狙われ、何度も危険な目にあってまで旅をしたアスナ。
危険な目にあってまで叶えたかったからこそ冒険をしたとも言えますが、どうにも本気で「シュン」を生き返らせたかったようには思えなかったので考えてみました。
少しネタバレになるので、まだ観ていない人は注意してください。
武装した男たちに襲われ、アガルタに逃げ込んだアスナでしたが、アスナは巻き込まれただけで帰ろうと思えばすぐに帰れました。
なのに一緒にアガルタに来ていたモリサキが自身の妻の復活のためアガルタの奥に向かう事を決意すると、同じくシュンを復活させるためにアスナも付いていきます。
モリサキとアスナの二人の旅は、時に化物やアガルタの住人に襲われ、死にそうになりながらも続いてきます。
そして目的地。そこは巨大な縦穴で、目的の場所は縦穴の底でした。
命綱も何もない大穴の側面を、モリサキは道具も何も使わず命がけで降りていく。
アスナは縦穴のあまりの高さに怖くなり降りることが出来ず、結局途中で寄った村に戻ろうとします。
ここで二人の死者に対する思いの強さが出でます。
モリサキは自分の命に変えても妻を生き返らせたかった。
アスナはそこまでの強い思いを抱くことは出来なかった。
アスナは途中立ち寄った村に戻る時、「自分はただ寂しかっただけなんだ」と理解します。
そう、アスナはただ寂しかった。
死んでしまった「シュン」を生き返らせようとしたのも、自分の相手をしてくれる人が居なかったから。
いつでも帰れるのに、戻ろうとせずモリサキと一緒に行動したのは、戻って一人になるのが怖かったから。
旅の途中アスナはモリサキの事を、死んでしまった父の変わりのように感じ始めます。
化物に襲われて死にそうになっても旅を止めなかったのも、父親代わりのモリサキが居たから。
もし一人旅だったら、命をかけてまで「シュン」を生き返らせる覚悟の無かったアスナは早々に地上世界へと逃げ帰っていたと思います。
そうして目的地まで来て、最後は自分の力で縦穴を降りなくてはならなくなった時、覚悟の無かったアスナはついに旅を断念します。
そして村に戻る時、化物に襲われることで、自分が本当はただ「寂しかっただけだ」ということに気がつくのです。
『星を追う子ども』は決して「死んでしまった少年を生き返らせるために、死者を追いかける物語」ではありません。
本当の意味で死者を追っていたのはモリサキであり、アスナは父親をなくし、優しくしてくれた青年をも失って、悲しみと喪失感を感じた少女が、誰かにすがって旅をしていた。
『星を追う子ども』は、寂しさ故に一人になるのが怖くて、最後までモリサキについてきてしまった少女の物語なのです。
「自分はただ寂しかっただけだった」ということに気がついたアスナでしたが、だからといって気がついた事によって物語が転調するわけではありません。
この気付きはアスナが今後成長していくうえでの大切な気付きであって、物語自体には何ら関係が無いからです。
きっと映画の後、アスナの成長の一部として現れてくるものだと思います。
総評まとめ
ジブリに似ているという意見が多く、評価もそこまで高くないので少し心配していたのですが、結果として面白い映画でした。
確かにジブリ似ている場面やシーンが多かったですが、それはジブリの偉大さの影響を受けてのことでしょうし、シナリオ自体が丸パクリというわけでは有りません。
物語展開や、背景美など、新海誠監督らしさのある映画と言えると思います。
また、今までの監督作品は大人向けな内容でしたが、この『星を追う子ども』は子どもでも楽しめる映画です。
この『星を追う子ども』があったからこそ、後の全年齢に受けて大ヒットとなった「君の名は」に繋がっていくのではないかと思います。
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