邦画

書籍「いちばんわかりやすい インド神話」感想&レビュー

この記事は2019年1月8日に発売された、天竺奇譚 著「いちばんわかりやすい インド神話」を紹介しています。インド映画はもちろん、ゲームなどからインドの神話や神様に興味を持った人に入門としておすすめです!

KINDLE版を私自身が読んだ感想を交えながら、本の中身について簡単に紹介していきます。

インド映画初心者におすすめしたい

「バーフバリ」旋風が吹き荒れた2017年と2018年。ブログを始める前の私もその渦中にあり、S.S.ラージャマウリ監督が築き上げた異様に面白い神話に魅了されました。

その頃入手したバーフバリのパンフレットを始めとした解説記事などで、神話の英雄や神様などの引用について解説された文献もいくつか拝見しましたよ。

でもね、正直ピンとこなかった。ちょこっとWikipediaなんかで調べても、体系的に頭に入ってこなかった。

元ゲーマーの私の場合せいぜい「あーシヴァ様って強いペルソナだったなあ」とか「カーリーの”空間殺法”お世話になったわあ」とゲームの思い出を引っ張り出す程度で、神話の中でどういう位置づけなのかよく分からず。

いや、もっと熱中して調べたらいくらでも丁寧な解説は見つかると思うんですけどね。ずぼらなので、割とほったらかしたまま来ました。

インド映画デビューである2017年のお正月に見た「PK」なんか、それこそ宗教と神様がもろにテーマだけど、その頃から割と素通り。まあそれでも楽しめるのでいいんですが。

今回紹介する天竺奇譚 著「いちばんわかりやすい インド神話は、そういう自分で深く調べるのが億劫な人にはもってこいの、というか私みたいにズボラなインド映画初心者にはぴったりな一冊です。

インドの叙事詩と神様たちを楽しみながら知る

ヒンドゥー教の成り立ちからスタート

本書「いんちばんわかりやすい インド神話」は、そもそも現在のインドでメジャーな宗教として知られるヒンドゥー教の成り立ちから始まります。ここが嬉しい。

序章「インド神話とは何か?」で土着の信仰があったインド亜大陸に対し、北からバラモン教が伝わり、ヒンドゥー教へと変遷していく様子が図解入りで解説されています。

南インド映画「バーフバリ」は物語や歌詞、美術などの随所に熱烈なシヴァ様推しを見せていましたが、なぜシヴァ様への信仰が南インドで根強いのかについてこの序章の時点で一つの回答が得られてしまいます。

あと他所の神様を取り込んでヒンドゥー教の信仰対象にしてしまうことで膨大な数の神様が出来上がったという性質。

この辺のいい意味での貪欲さ無邪気さなんかは娯楽インド映画でのオマージュにも見て取れるかなあなんて思ったりします。国内外を問わずに他所の映画の格好いい所をごっそり持って来て、自分の映画の見せ場にしてしまう気質は他の国よりかなり強い傾向にあると思うのです。

2大叙事詩「ラーマーヤナ」「マハーバーラタ」読める!

Wikipediaなんかで調べるとあまりに簡素すぎて逆に分からなかったり、専門書には手を出すのは億劫だったインドの叙事詩「ラーマーヤナ」と「マハーバーラタ」。

「この2つの物語をついに読むことが出来た!」というのが率直に嬉しいです。知識として「ラーマーヤナ」が桃太郎伝説の原典だとか、「マハーバーラタ」の5王子がバーフバリのキャラ造形の元ネタというあたりは知っていましたけど、話自体が面白いのかどうかは全くわかりませんでしたから。

やはりひとつの物語として読めるというのは大きくて、どちらの叙事詩も「面白い」です。基本的には英雄譚ですので、安心してヒーロー物としても読めますからね。

個人的に好きになったのは「ラーマーヤナ」のほう。基本的にはお姫様救出物として典型的なお話が進行して、終盤でしっかり助けて終わります。

そこからの展開がすっごく面白い。

爽やか英雄譚から一気に悲劇性を帯びてビターなエンドで終わる結末・・・。偶然かもですが、個人的に2018年に見たICWで見た映画のうちの2作品(ネタバレになるのでこの記事内では名前を伏せます)を想起させるような展開でした。

もし「ラーマーヤナ」を知らないという方は本書で是非その結末を知ってほしい。あなたが既に見たあのインド映画の結末も、この叙事詩をなぞっているかもしれません。

神様の紹介と愉快な事件簿

2大叙事詩の紹介を読み終わるだけでも、それなりに神様の関係図はかなり頭に入ってきます。でもその後に続く、登場人物である有名な神様&英雄の設定集とでも言うべき第2章「インド神話の神々」と続く第3章「神々の事件簿が」また面白い!

なんかね、人間味ありすぎなんですよ彼ら。著者も述べられていますけど、かなり欲望に忠実ですし、良くも悪くも真っ直ぐ生きすぎ。

それによってまき起こる事件も発端がしょうもなかったり、異様な大事に発展したりと眺めるだけで賑やかです。

特に本書の前半から名前だけは度々出てきた、その名も「乳海攪拌事件」がヤバイ。詳細は後述、といった形で結構引っ張られる形でワードだけずっと出てきます。

いわゆる世界の始まりについてのお話で、おそらく人によっては常識なのでしょうけど無学の私は全く知らない物語・・・というか只のパワーワード。

乳海攪拌事件とはいったい・・・」前半から我慢して、いよいよ第3章に読み進んで行くとですね、しっかり書いてあります。

もうね、思ったよりも規模がすごすぎると言うか・・・。この事件ひとつで大作映画が余裕で作れるというくらいに、豪華な登場人物とアクションで彩られています。正直ちょっと興奮しました。

この章に至るまでに各神様についてしっかり紹介がされていて、それぞれの功績も知った状態で、オールスターが総出でキャラを活かしたアクションをする「乳海攪拌事件」が登場するというこの本の見事な構成。

これは各ヒーローの単独映画後に総決算的オールスターストーリーを披露するという共通点を考えるに・・・インド神話アベンジャーズと言っていい。

無学は恥といいますけど、「乳海攪拌」知らずに読んだおかげで普通に楽しかったのです。そしてこの事件が楽しめる程度まで学習できた上で紹介してもらえるので、本当に構成が初学者を意識されていて嬉しい部分でした。

まとめ

本の宣伝としてインド神話を引用した特定の映画やゲームの名前が踊っていたのですが、本の中身自体はそこを名指しして紹介する形ではありませんでした。

例えばバーフバリ親子の名前「アマレンドラ」と「マヘンドラ」はとある神様を称える呼び名ですが、この本にはごくアッサリと、忍ばせるように書かれています。

読者として引用ネタを探す楽しみをしっかり残してあるようにも思いました。

冒頭に書いたようなペルソナシリーズについても、神様が手に何を持っているか、何を身に着けたデザインになっているかゲームを確認しながらもう一度読みたいと思える内容です。

あるいはバーフバリの有名な弓矢のシーン、矢筒に入った矢の本数がカットごとに増えたりするのはこのアイテムが元ネタなのか?とか。あるいは映画「パッドマン」の人物名はあの神様とあの神様・・・などなど。

今後も個人的には必携の一冊と思える内容でした。サクサク読める上に値段も控えめ、辞書代わりにもできそうな神様や神話の紹介文量など、初心者としては文句なし!

興味のある方はぜひ手にとって見てください。
乳海攪拌事件」を楽しめればあなたもインド神話初心者脱出だ!(たぶん)

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のっち
ムービニアンズの丸い方。 趣味はゲーム・・・だったけど今はもっぱら映画鑑賞。 洋画を中心に、アニメ、ドラマをよく見る。 最近はインド映画も修行中! 今までに見た映画はこちら