原題:Shazam!
上映時間:132分
監督:デビッド・F・ザンドバーグ
キャスト:ザカリー・リーバイ、アッシャー・エンジェル、マーク・ストロング、ジャック・ディラン・グレイザー、グレイス・フルトン
あらすじ
身寄りがなく里親のもとを転々としてきた少年ビリーはある日、謎の魔術師からスーパーパワーを与えられ、「S=ソロモンの知力」「H=ヘラクラスの強さ」「A=アトラスのスタミナ」「Z=ゼウスのパワー」「A=アキレスの勇気」「M=マーキューリーの飛行力」という6つの力をあわせもつヒーロー「シャザム(SHAZAM)」に変身できるようになる。
筋骨隆々で稲妻を発することができるが、外見は中年のシャザムに変身したビリーは、ヒーローオタクの悪友フレディと一緒にスーパーマン顔負けの力をあちこちで試してまわり、悪ノリ全開で遊んでいた。
しかし、そんなビリーの前に、魔法の力を狙う科学者Dr.シヴァナが現れ、フレディの身に危険が及んでしまう。遊んでいる場合ではないと気付いたビリーは、ヒーローらしく戦うことを決意するが……。
引用元:https://eiga.com/movie/83921/
4月21日 TOHOシネマズ梅田にて字幕版を鑑賞 [ 90/100点 ]
DCヒーローで特に有名な「スーパーマン」「バットマン」をよそに、あまり知名度は高くなかった本作の主人公シャザム。
私も今回の映画化ではじめてその存在を知りましたが、個人的には今年トップ5入り級の娯楽映画でした。
日本の公開時期が超大作「アベンジャーズ/エンドゲーム」の裏、GW向けに怒涛のように公開されたアニメ映画群に埋もれてしまった本作ですが、劇場で見ないのは本当にもったいない!
私事ながらこの作品を見た時期が引っ越し&結婚準備の真っ最中だったこと、見てからかなり時間も経ているので、今回はさっくりとした感想です。
本記事は決定的なネタバレが含まれます。ご注意ください。
ジュブナイル映画として大好き
「選ばれし子供」が「筋肉ムッキムキ」の「魔法使い」になるという、普通に考えればリアリティ希薄なファンタジー設定。
しかし本作「シャザム!」を見たあとは、この荒唐無稽ギャグ満載なヒーローが何故か現実世界にいてほしい、フィラデルフィアに行けば会えるヒーローとしていたらなあと、本当に思えてしまう。
去年の似た映画だと
- 期待するハードルを大きく越えてきた
- 少年少女の冒険譚を描いた
という点で「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」を思い出しました。2018年7位に挙げていた映画ですが、「シャザム!」はこれを更にブラッシュアップした完成度と衝撃度でしたね。とにかく個人的にどストライクでございます。
実はめっちゃ繊細な映画「シャザム!」
どストライクな理由は、キャラクター造形やドラマ、演出のうまさ、主軸テーマからサブストーリーにオマージュまで描き方が丁寧であることでした。
単に不真面目ヒーローで映画宣伝をしたり、吹き替えの監修についてSNSで炎上するなどの場外で盛り上がるだけではもったいない、見どころ満載の映画です。
主人公ビリーとドクター・シヴァナ、そして親友フレディ
まずはキャラクター同士の自然な関係性の構築、立場や思想の違いによって生じる違和感のない葛藤やドラマです。
個人的に好きなのが少年時代に親と兄弟に恵まれなかったドクター・シヴァナと、母親とはぐれてしまった主人公ビリーの対比です。
この二人はどちらも家族という関係性に悩まされた少年時代を過ごし、どちらもシャザムになり得た人物です。故にラストのバトルでも互いの”痛み”について理解を示しつつ戦うという抑えるべきツボをしっかり抑えているのが素晴らしいです。
これによって主人公ビリーが血縁の母親と再会したときに、「2度目の別れ」を面と向かって告げられたこの場面が際立ちます。家族を失ったときに支えとなるのは、やはり家族なのだという本作の明確なテーマです。
関係性のドラマでいうと相棒にして兄弟、ギークというおいしい役のフレディですね。演じるジャック・ディラン・グレイザー君は「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」に続いての好演でした。
変身したビリーとの凸凹コンビなやりとりはもちろんなこと、ビリーへの精神的なフォローや直接的なアシスト、トラブルメイカーとしてのお話を転がす役割まで縦横無尽でした。
能力テストはギャグシーンでありながら、シャザムのポテンシャルを説明にならない説明で見せていく手法として楽しめました。
公式よりキャラ解説予告。ビリーとフレディの楽しい能力テストをチェック!
さらにはマッチポンプでバス事故を発生&救出したビリーを”大人らしく”諌めつつも、「そんな能力が手に入るなら何でもする」と”子供ながら”の嫉妬めいた感情を発露させるなど、複雑なシーンもありました。個人的にフレディは演技・キャラクター共にMVPですね。
アクションのアイデアが超豊富!
こういった丁寧なドラマを表現するためにきっちりと”画”を引き締める撮り方や音楽演出も良かったです。今作はシリアス場面ではBGMをあえて控えることも多く、楽しい場面との落差が大きい印象でした。
シャザム状態のビリーとフレディが有名な階段で座って街を眺めるところなんかも、静かにしっとりと見せます。ギャグシーンはもちろん笑えたけども、真面目なところで徹底して引き締まった作りなのが好きです。
アクション場面においてはその変化やアイデアの豊富さ・・・褒めるところに枚挙の暇がありません。
先程あげたの能力テストの下りだけで見ても、例えば「銃弾を弾くのはスーツだけなの?顔を撃たれたらどうなるの?」などと観客が思う疑問を先回りして全部やってくれるのが、本当に気持ちがいいです。
あるいは「空は飛べるのか?飛べそうなだけで無理なのか?」という疑問点はさんざんテストしたあとに引っ張って、中盤でビリーの成長を表現する伏線として活用されました。
飽きないアクション演出への工夫でいうと、変身のパターンが毎回ごとに変化をつける素晴らしさが見事です。シャザムに変身する方法が「名前を口にするだけ」という簡単な方法だけに、「どういうアクションを絡めて変身するか」へのこだわりには執念を感じます。
- 「シャザム!」と言わされて変身!
- たまたま口にして変身!
- 変身するときの落雷で目くらまし!
- ビルの屋上から意を決して飛びなから変身!
- 水中に顔を押し付けられて「シャザム!」と言えない超ピンチ!
この変身シーンへのこだわりがなければ、「シャザム!」はもっと淡白な映画になっていたかもしれません。面白いヒーロー映画を作ってやるという作り手の意志をビンビンに感じてしまうポイントです。
オマージュのテーマ性まで完璧!
ここまで丁寧で「シャザム!」というヒーローを考え抜かれた作品でしたので、劇中で度々ネタにされていたロッキー
ロッキーはシリーズ全体に「家族」が主軸テーマに深く絡んだ映画です。
特にロッキー1作目やクリード1作目などは、主要な登場人物は血縁の親がいない人々で構成されています。そんな彼らが人生の尊厳を取り戻したり、血縁の外に暖かな家族を見出す過程に深い感動を覚えるという、そんなお話でした。
「シャザム!」という作品も同様のテーマを扱い、だからこそ明らかにロッキーの深い「孤独と家族」に関わるテーマ性を完全に踏まえた上で、オマージュをして見せています。
このネタ一つの引用をするにしても、とても繊細な扱いに感じられとても好感が持てました。
まとめ:今年を代表する娯楽作・好感しかない!
この映画の真面目な部分ばかりをクローズアップしましたが、もちろん笑いもあってこそです。というかこの映画で起こることは描き方によっては恐ろしく暗くて、重たい内容になりかねない・・・。特にビリーの母親との再会はきついです、本当に。
くどくないバランスで適度に箸休めをくれる配慮も含めて隙がないです。
強いて言えば盛りだくさんすぎて色々やりすぎ、ちょっと長いなと思うシーンがちょこちょこあったくらいでしょうか。遊園地でのバトルシーンあたりでそう感じましたが、楽しくもあったので悩ましいところ。
総合的にはそんな細かいところの不満点はどうでもよく、文句なしに今年を代表する一本として推したいですね。


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