原題:残穢 上映時間:107分 監督:中村義洋 キャスト:竹内結子、橋本愛、坂口健太郎、滝藤賢一、佐々木蔵之介など
あらすじ
小説家の「私」に、読者である女子大生の久保さんから届いた一通の手紙。「住んでいる部屋で奇妙な音がする」と書かれたその手紙に、好奇心から「私」と久保さんが調査を開始する。そこで明らかとなったのは、その部屋の過去の住人たちが転居先で自殺や無理心中、殺人などさまざまな事件を引き起こしたという事実だった。彼らは、なぜその部屋ではなく、さまざまな別の場所で不幸に遭ったのか。「私」たちは、ある真相にたどり着き、さらなる事件に巻き込まれることとなる。引用元:https://eiga.com/movie/82365/
「屍鬼」や「十二国記」で有名な作家、小野不由美さんの小説「残穢」を映画化したのがこの映画『残穢【ざんえ】−住んではいけない部屋−』です。
私は小野不由美さんの大ファンで、残穢もハードカバー版を発売日に買っていたのですが、当時は中々読めず半分ぐらいまでしか読めていませんでした。
そうこうしているうちに映画が出てしまい、今回機会があったので先に映画を観てしまおうと考え視聴。
観てみるとこれが、ここ最近無かったゾッとするような恐怖を感じることになりました。
日常のちょっとした違和感から始まる物語
残穢は純粋なホラーというより、どちらかというとミステリー寄りのホラー。
ミステリーとホラーを混ぜたような内容です。
そのため物語はゆっくりと始まり、冒頭は全く怖くありません。
「どんな映画でも冒頭は怖くない」という人もいるかと思いますが、この映画の場合、
「部屋の中で、畳を何かが擦るような音がする」
というそれだけの内容でしかない。幽霊の姿形すら出てこないのです。
そんな内容なので、怖いと感じる場面はほとんどありません。
物語の始まりは、都心から離れた築10年という比較的新しいマンション。その202号室に「久保さん」が引っ越してきたところから始まります。
202号室ではなぜか誰もいない部屋から頻繁に、畳を擦るような音が聞こえるようになる。
女子大学生の「久保さん」は、音は気になっているものの、恐怖はそこまで感じていなかった。
ただ不思議で少し不気味だから、ホラー作家でもある「私(小野不由美)」に手紙を出したのだった。
「私」と「久保さん」との手紙やメールでのやり取りが行われる中で、久保さんが住む202号室とは違い、405号室でも同じような音がすることが分かる。
405号室では音がする他に、部屋に母親と住む小さな女の子が、時たま天井をボーッと見ては「ブランコ」と呟いたり、人形の首にヒモを引っ掛けて、まるで首吊りのようにして人形で遊んでいたのだった。
また、久保さんの隣の部屋、201号室は頻繁に居住者が入れ替わり、家賃も相場よりかなり安い。
201号室に前に住んでいた人は、赤子の泣く声を常日頃から聞いていて、最後には引っ越した別のアパートで自殺したという。
明らかに異常な部屋が多いのに、マンション自体で今まで人が死んだり事故があったことは無かった。
この不思議な冒頭で、各部屋で起きる現象の原因をついつい視聴者も考えてしまいます。
考えているうちに、気がつくとこの「残穢」の世界に視聴者は引き込まれているのです。
まるで泥のように物語の深みへと嵌って逝く
序盤ではマンションで起こる複数の不可思議な現象が、次々明らかになっていきました。
中盤からは徐々にこの謎が解明されていきます。
このマンションが立つ前には、1軒の家と、3軒分の空き地かあった。昔は4軒家が建っており、そのうち3軒は無くなったのだという。
さらにその前は2軒の大きな屋敷があった。
これらの家の住人は、ところどころ”おかしな点”があったようだった。
”おかしな点”一つ一つを見ると、唯のボケ老人であったり、偏屈爺だったりと、そこまで変な話では無い。
だが一つのピースが嵌ると、まるでパズルのピースが途端に解けるかのように、次から次へとこのマンションに起きている”現象”の正体が暴かれていく。
謎が一つ暴かれるごとに恐怖が徐々に増していく。
恐怖心を掻き立てるような音楽や、ビックリさせて驚かせるような演出は一切無い。
だというのに、本当に怖い。
和製ホラーの純粋に心の底から湧き上がる恐怖をこの映画では感じることが出来た。
いや、ホント最後辺りの、床の下の存在とか、ボケてるおばあちゃんが聞いていた声とか、今思い出すだけでも背筋がゾワゾワっとするような恐怖でした。
そして、物語のクライマックスに冒頭も冒頭、一番最初の「私」が執筆した小説に戻ってきて、全てが繋がるという演出は素晴らしかった。
観たあとに思う これは現実に起きないのか?

人の恨み、辛み、憎しみ、穢れ。そういったものが土地に残り、そこに新たに入った人を侵す。
侵された人間が更に穢れとなって各地に広がってゆく。
私達は遥か昔から同じ場所に住み続けています。今私が住む土地も、以前は別の人が住んでいました。その前も、その更に前も、その前の前も。
そういった人たちの念は、本当に消え去るのか。人が消えても念だけが永遠と残り続けているのではないか?
そんなことを言い出すと、私の住む京都なんて何度も戦火に巻き込まれ、数多くの人が死んでいる地でもあります。
ですが今まで私に問題があったことは有りませんし、京都に昔の人物の亡霊が出た。という話は聞いたことがありません。(京都なので探せば有りそう)
本当は気が付かないだけで、今まで住んできた人たちの想いや穢れといったものは、実は土地に残っているのかもしれません。
そう、あなたの住む場所も・・・。
残念だった点
序盤のちょっとした違和感から入り、謎を解くようにして真相を解明してく場面は本当に素晴らしい。
段々と暴かれていく”怪奇現象”の正体。それぞれで起こった事象との関連性。
これらの繋がりは観ているものをグイグイと引き込んでいった。正直途中は怖かった。
派手な演出が無い中でも、恐怖を感じさせるシナリオや演出は素晴らしかった。
ただ残念だった点として、最後の展開があまりに陳腐すぎた。
最後の展開は、良くある関係者全滅エンド。
今まで関係してきた人物の前に、幽霊たちが現れ襲ってくる。
昔からよく使われた手法である分、最後の展開は読めてしまう。
また、襲いに来る幽霊たちもしょぼいCGなため陳腐で怖さは全く無い。
途中まで本当に物語に引き込まれ恐怖すら感じたのに、最後の展開が全てを潰してしまった。
この一点が本当に残念だった。
残穢まとめ
さて、上記感想の中で何度も「怖かった」と言ってますが、私は「Xファイル」すら怖いと思ってる人間なので、恐怖度はそんな人間が感じている怖さのレベルだと思ってください。
今回思ったのは、やはり小野不由美さんが作る物語は面白い。ということ。
映画の出来も良かったですが、やはり小説の方が出来は良かったように思います。
映像で見せる怖さと、文字で魅せる怖さは違うとは思いますが、文字だからこそ表現できる怖さ、描写が小説にはあります。
その描写が本当に上手い。
ただ映画は映画でよく出来ており、ミステリー・ホラーとして面白い映画でした。
一つのホラー映画としてちゃんと楽しめる映画だと思います。
小説の「残穢」はまだラストまで読めていませんが、最後は映画のとおりに終わるのか確認したいと思います。
今度こそ最後まで読むぞー!
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小野不由美先生の大人気シリーズ『十二国記』新作が、2019年中に発売です。物語はファンが気になってならない戴国(たいこく)の続き! 待ちに待った物語です!
『十二国記』ファンも『十二国記』を読んだことがない人も、この機会に是非読んでみてください! 本気でオススメ出来るファンタジー小説です。
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